メムの贈りもの

 

 


  

 

 

  【目次】

 

   1.メムとぶどう

   2.メムとレースのカーテン

   3.メムとダンボール

   4.メムとガラスクリーナー

   5.メムとバケツ


 

 

メムとぶどう

 

 

メムは

大好物のぶどうを食べる時

ほっぺたが

ぷーっとふくれます。

欲張って口に

いっぱいいれているのでは

ありません。

一粒一粒

口に入れて食べるより

いっぱい口に入れて

食べるのが好きなのです。

これがメムの

ぶどうの食べかた。

でも

ちゃんと皮と種は

お皿の上に出して食べます。

たまに種も食べちゃうけど

メムは

ぜんぜん気にしません。

 

 

 

 

あまりぶどうが

育たない年がありました。

果物屋さんにはぶどうが

ほんの少ししか

並んでいません。

ふとメムは

こんなことを思いつきました。

 

「土の中にいるモグラさんが

 ぶどうの木の

 土や水の世話をしてくれたら

 きっとぶどうも喜んで

 たくさんの実をつけてくれる」

 

メムは思いついたことを

絵に描きました。

 

 

 

 

 

描き終わった瞬間

窓から強い風がはいってきて

メムが描いた絵は

外に飛ばされてしまいました。

メムは風にのった絵に

窓から手をふりました。

カラスが

飛んでいる絵を見つけました。

絵を追いかけて

口にくわえると

港のほうに飛んでいきました。

船の手すりには

カラスの恋人がいました。

 

「この絵、おもしろいでしょ?」

 

恋人に自慢げに見せました。

 

「つまんな~い」

 

恋人はその絵を

海に捨ててしまいました。

 

 

 

 

 

メムの描いた絵は

波にユラユラゆられ

小さな島に着きました。

 

 島の子供が

メムの描いた絵を見つけ

お家に持って帰りました。

なんと!!

この島は

ウドーブ星人の秘密基地。

地球人の研究をしている

秘密の島でした。

 

「これはきっと

 地球人の秘密の

 図面に違いない!!

 よし!!

 早速この物体を

 作ってみよう」

 

島にいる

ウドーブ星人は

みんなで

知恵を出しあって

物体の設計図を

作りました。

この物体が

なんの役に立つのか

わからないまま

ウドーブ星人は

ロボットモグラを

作り続け

あっという間に

1000体も

作ってしまいました。

  

 

 

 

 

 

 

実験開始。

ロボットモグラは

土を肥えさせ

水の多い場所から

水分を運んできます。

島にある木々や花々は

生き生きとしてきました。

ウドーブ星人の実験は

大成功です。

みんなで大喜びしていた

その時

ウドーブ星から

連絡が入りました。

 

「すぐにその島から

 ほかの島に移動し

 新たな研究を始めよ」

 

島には1000体の

ロボットモグラが

そのまま

置き去りに

されてしまいました。

それでも

ロボットモグラは

与えられたことを

毎日やり続けました。

 

 

 

 

 

 

 

数年後

ぶどうの収穫は

かつて類がないほどの

大豊作でした。

 

くだもの屋さんには

たくさんのぶどうが

並べられました。

 

メムには

嬉しい出来事でした。

そしてメムだけは

気がついていました。

いろいろな人の

お家のお花や

街の中に咲いている

お花たちが

輝くように

綺麗だということを。

 

 

 

 

 

 

 

ロボットモグラさんは
あなたののそばにも
あなたの街にも
いるかも・・・。

 

 

 

〈おわり〉

 

 


メムとレースのカーテン

 

 

 

メムは近くの野原に

たんぽぽを

とりに行きました。

太陽が

黄色い花びらに

指をのばし

 

「この指と~ま~れ」

 

と呼びかけています。

 

遊びたい気分の太陽は

指をなが~くのばして

遊び仲間を

増やしていきます。

太陽の

 

「この指と~ま~れ」

 

の合図を

一番初めに受けとって

ピョーンと

飛びついたのは

大きな大きな

桜の木でした。

 

 

 

 

 

 

桜の木は

サワッサワッと

花びらから光をだして

たんぽぽに伝えました。

たんぽぽは

太陽が笑っている時だけ

花を開きます。

野原に咲いている

たんぽぽは

みんな花が開いて

笑っています。

メムは

笑っていない

一本のたんぽぽに

気がつきました。

でもそのたんぽぽは

キラキラと

光っていました。

 

 

 

 

 

 

メムは
光っているたんぽぽを
じ〜っとみつめていました。
メムは
光っているたんぽぽを
触りたくなりました。
立ちあがって
光っているたんぽぽに
触れるところまできた時
メムの足に白いものが
巻きつきました。
メムは怖くなって
足を見ることができません。
それでもメムは
勇気をだして
がんばって
ドキドキしながら
顔だけ曲げて
足を見ました。
メムは
よ~くよ~く見ました。
大きい虫ではないことは
わかりました。
ジィ~っとジィ~っと
見ました。
ただの白い布だと
わかったメムは
ホッとしました。
布を手で
触ってみました。
白い布は
レースのカーテンでした。

 

 

 

 

メムは

レースのカーテンが大好きです。

メムのお家の

みどりのレースのカーテン

お花屋さんの入口にある

フリルのいっぱいついた

きいろのレースのカーテン

ケーキ屋さんの出窓にある

みずいろのレースのカーテン

 

メムは

どのカーテンも

ぜんぶぜんぶ大好きです。

 

メムは

足に巻きついた

レースのカーテンを

片手に持って

野原を

駆けまわりました。

 

 

 

 

 

 

レースのカーテンは
桜の枝に
ひっかかりました。
メムはそのまま
レースのカーテンをひろげました。

桜の木の枝と
メムの手でひろげられた
レースのカーテンを見て
メムは大発見します。

レースのカーテンに
映る夕陽は
今まで
メムが知っていた
夕陽と違っていました。

色は少し薄く
ゆらゆらと揺れています。

メムは空にある夕陽と
レースのカーテンに写る夕陽を
何度も何度も見くらべました。

 

 

 

メムは

レースのカーテンを
ひきずりながら
キラキラ光る
たんぽぽを
とりに行きました。


メムは
びっくりしました。
キラキラ光るたんぽぽは
笑っていなかったのに
今はとびっきりの笑顔で
笑っています。


メムは
嬉しくなって
レースのカーテンと
キラキラ光るたんぽぽを
お家まで持って帰りました。

 

夕陽の

 

「この指と~ま~れ」

 

一番最初に
飛びついたのは
メムだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あなたも夕陽の

 

「この指と~ま~れ」

 

飛びついてくださいね。
誰が一番でしょう。

 

 

 

 

〈おわり〉

 

 

 

 


 

 

メムとダンボール

 

 

 

 

メムは朝から落ち着きません。

1時になったら

仲良しのナノちゃんが

遊びにくるからです。

 

メムはこの間

野原で拾ってきた

レースのカーテンを

お部屋の窓につけました。

 

テーブルの真ん中には

赤いチューリップを飾りました。

テーブルの上には

黄色とオレンジの

チェックのお皿を2枚と

魚の形のフォークを2つ

きちんと並べました。

 

メムは窓を開けました。

外はそよそよと

風が吹いています。

レースのカーテンは

メムに話しかけるように

ゆらゆら揺れています。

 

 

 

 

あと数日で
メムのお家はお引越し。


荷物はほとんど片付いていました。
時計を見ると、まだ10時。
ナノちゃんが遊びに来るのには
まだまだたくさん時間があります。


メムは
隣の部屋に行きました。
そこには絵も字も書いていない
空のダンボールがありました。


メムのお家にはときどき

空のダンボールがありました。
ダンボールには野菜の絵や
たくさんの字が書いてありました。


メムは
空のダンボールを見つけると
そっと中に入って
いろいろなことを
空想するのが好きです。


今まで
一番空想したことは
空を飛ぶことでした。

 

 

 

 

 

 

 

メムは夢の中で

アリさんから

空を飛んだ話を

聞いたからです。

 

アリさんは

スズメさんの背中に

乗せてもらって

空を飛びました。

 

メムは考えました。

 

「わたしは

 スズメさんより

 大きいから

 乗せてもらえないなぁ・・・。

 自分で飛べるように

 ならなくては

 ダメかなぁ・・・

 どんな練習をすれば

 いいのかなぁ・・・」

 

メムの空への憧れは

どんどん

ふくらんでいきました。

 

ダンボールの中は

メムの秘密の世界。

 

たま~に空のダンボールの中に

こっそり入っていたことは

家族の誰も

気がついていません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時になりました。

 

ナノちゃんは

たくさんのチューリップを持って

遊びにきました。

 

 

メムはチュリーップの花が大好き。

ナノちゃんはメムの大好きなものを

知っています。

 

テーブルの上に

並べてあったお皿には

ショートケーキがのっています。

 

花瓶には

ナノちゃんが持ってきてくれた

チューリッブも飾りました。

 

でもメムはこっそりと

葉っぱは小さいけれど

花が一番大きいチュリーップを

一本だけ手に持ちました。

 

 

それは・・・メムには

思いついたことがあるからです。

 

 

 

 

 

 

 

3時です。

 

ナノちゃんが

帰る時間になりました。

 

メムが

葉っぱは小さいけれど

花が一番大きいチュリーップを

こっそり隠したのは

ナノちゃんに

プレゼントするためでした。

 

ナノちゃんは

嬉しくて

びっくりしました。

 

ナノちゃんは

持っていた虹色のハンカチを

メムにプレゼントしました。

 

メムも嬉しくて

びっくりしました。 

 

 

 

 

 

 

 

ナノちゃんが帰ってしまったので

メムはまた

隣の部屋に行きました。

 

さっきのダンボールは

閉じられていました。

 

メムは

ダンボールの上に座り

ナノちゃんからもらった

虹のハンカチを

足の上に置きました。

 

虹の真似をして

飛ぶ練習をしたら

丘から丘へと

飛ぶことが

できるかもしれないと

考えました。

 

メムは

やっと飛ぶための

練習方法を見つけました。

 

次の日

メムのお家の中は

空っぽになりました。

 

メムの隣には

大きな大きな虹が

優しいほほ笑みを

浮かべていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの隣を見てね。
大きな大きな虹が
優しいほほ笑みを
浮かべていますよ。

 

 

 

 

 

〈おわり〉

 

 

 


メムとガラスクリーナー

 

 

 

メムは

元気がありません。

 

あまり笑わなくなって

一週間が経ちました。

 

メムのお家は

一軒家からマンションに

引っ越しました。

前のお家では

メムの大好きな窓がありました。

 

メムはその窓から

外を見るのが

大好きでした。

 

窓からは

お庭が見えました。

 

春はチューリップ

夏はヒマワリ

秋はコスモス

冬はスイセン

 

メムは

季節のお花を見ながら

いろいろなことを

想像するのが大好きでした。

 

ある時は

ゾウの耳に

チューリップのリボンを

いくつもつけました。

 

ある時は

クマの頭に

ヒマワリの帽子を

かぶせました。

 

ある時は

カバの背中に

たくさんのコスモスを並べて

洋服を着せました。

 

ある時は

キリンの首に

スイセンのネックレスを

つけました。

 

メムが大好きな窓は

四季の印が

ありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

メムにとっては

なによりも窓が大切。

 

 

メムはいつもはりきって

ふたつの道具を持ちます。

 

それは

窓を拭く雑巾と

ガラスクリーナー。

 

窓が汚れたら

すぐにお掃除をします。

 

どうしてメムは

いつも窓を

綺麗にしているのでしょう。

 

それは

大好きなお花が

見えないと

つまらないからです。

 

メムが元気ないのは

今度のお家には

お庭がないからです。

 

植木鉢に植えてあるお花は

ベランダにあっても

ちょっぴり不満です。

 

そこには

メムの大好きな

大地がなく

メムの大好きな

スズメもアリもいないからです。

 

 

 

 

 

メムは

お天気がいい日は

お庭で遊ぶのが大好きでした。

 

 

アリを見つけると

飛びあがるほど嬉しくて

アリを膝の上に乗せて

一緒に遊びました。

 

今は春。

いつもなら

アリと一緒に

遊んでいる季節。

 

でも引っ越した

ここには

大地はなく

アリもいません。

 

 

メムは寂しくなりました。

 

 

 

 

 

 

ある日メムは

すごいことに

気がつきました。

 

メムのお家は11階。

大地は遠くなったけど

空が近くになりました。

 

これはメムにとって

嬉しい発見でした。

 

「空がこんなに

 近くなって

 素敵だなぁ」

 

メムは急に

ワクワクしてきました。

 

お庭を見ることは

できなくなってしまったけど

今度は大きな大きな

空を見ることが

できるようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

メムは

また元気がありません。

 

3日も曇り空が続いています。

星や月も顔を出しません。

メムはその空を見て

前のお家の

汚れた窓ガラスを

思い出しました。

 

ガラスが汚れていて

お花が見えない時

ガラスクリーナーで

窓のお掃除をしました。

 

「そうだ!!

 ガラスクリーナーで

 お空を

 お掃除すればいいんだ!!

 そうすれば

 星も月も

 見えるようになるんだ!!」

 

メムはルンルン気分で

お布団の中に入りました。

 

「このあいだ考えた

 飛ぶ練習を

 たくさんしなっくっちゃ。

 飛べるようになったら

 ガラスクリーナーと

 雑巾を持って

 お空を

 お掃除しにいこ~♫」

 

次の日

満天の星と三日月が

さっぱりした顔で

メムを見つめていました。

 

 

 

 

 

 

あなたもガラスクリーナーで

気になるところを

お掃除してみてね。

 

どこをお掃除しても

きっとピカピカな光が

 

あなたを包んでくれますよ。

 

 

 

 

〈おわり〉


メムとバケツ

 

 

 

メムは

赤いチューリップの絵のバケツと

赤いジョーロは

魔法の道具だと思っています。

 

お花にお水をあげると

お花は嬉しそうに

ニッコリと笑い

お水をあげるのを忘れると

とても悲しそうになります。

 

メムは

赤いチューリップの絵のバケツと

赤いジョーロで

お花にお水をあげるのが大好きです。

 

 

晴れた日も

曇りの日も

雨の日も

 

メムはお花に

お水をあげます。 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴れた日の

メムは

 

歌を口ずさみながら

お花にお水をあげます。

 

 

 

ルンルンルン

ランランラン

 

赤いチューリッブの絵のバケツで

なんどもなんどもお水を運び

そのお水を赤いジョーロに入れて

お花にお水をあげます。

 

ルンルンルン

ランランラン

 

メムといっしょに

お花も歌います。

 

晴れた日のベランダは

とても賑やかです。

 

 

 

 

 

 

 

曇りの日の

メムは

 

ひとこともしゃべらず

静かに少しずつ

お花にお水をあげます。

 

 

お花にお水がかからないように

ゆっくりゆっくり

お水を土の中に流します。

 

時々太陽が顔を出す

曇りの日もありますが

ぜんぜん太陽が顔を出さない

曇りの日もあります。

 

どちらの曇りの日も

メムは静かに少しずつ

お花にお水をあげます。

 

 

 

 

曇りの日のベランダは

とても静かです。

 

 

 

 

 

雨の日の

メムは

 

お花にお水をあげるのは

おやすみします。

 

雨がお花のお水の時もありますが

ぜんぜん雨がお花にあたらず

お水をあげない日もあります。

 

どちらの雨の日も

 

メムは一生懸命育てた

花を摘んで

おうちの中に飾ります。

 

 

メムは雨の日のベランダが

いちばん好きです。

 

 

メムが育てた花を

家族が「きれいね」と

喜んでくれるからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたにもメムから

笑顔が届けられましたよ。

 

あなたもだれかを

笑顔にしてあげてくださいね。

 

 

 

 

 

〈おわり〉

 

 

 


 

 

 

絵本「メムの贈り物」

お読み下さいまして

ありがとうございました。

 

お読みくださったあなたに

少しでも

勇気希望

お届けできたら

嬉しいかぎりです。

  

 

 

  ~感謝を込めて~

 未来メディアアーティストMitsue