写真詩
あなたの隣にわたしがいて
わたしの隣にあなたがいた
いつもいつも
楽しく美しい暮らしが
ふたりを包んでいた
あなたがいなくなって
気づいたことのひとつです
あなたの前にいるわたしは
無邪気そのものだった
わたしがわたしでいるとか
わたしらしいとか
そんなこと考えたことも
思ったこともなかった
心が静かに眠れぬ夜でも
不安も怖さもなかった
あなたの優しさの裏にある辛さは
わたしには見えなかった
それだけあなたはわたしを
深く抱きしめ
守り続けていてくれた
あなたの涙に
触れなかったわたしを
許してください
今日はバスの一番前に座った
お昼に食べたパスタが美味しかった
帰りの電車は少し賑やかだった
いつものバス
いつものお店
いつもの電車
いつも家に帰れば
すぐにおしゃべり
いつも今日の出来事を
すぐに語り合う
ただいま
いつもは
独り言になった
電気がついている家に
帰ることは出来なくなりました
遠隔操作で帰る前に
電気をつけておくことも
今の時代はできるそうです
電気がついていたら
わたしは喜ぶでしょうか
今よりもっと
寂しくなるでしょう
あなたを探し続け疲れ果て
今日という日を失います
暗い家に明日も帰ります
あなたの前で無邪気にいた
わたし自身を失いました
書いた詩をあなたに見せ
書いた手紙をあなたに見せ
描いた絵をあなたに見せ
撮った写真をあなたに見せ
喜びそうなものをあなたに見せ
あなたの口から飛び出す
言葉がご馳走だった
すべてはどこにいったのか
探すことも諦めることもしないまま
なにも出来ないままでいる
あなたに逢いたいというよりは
同じことではあるけれど
あなたと話したい
あなたがいなくなって
出来ないことが
たくさん増えた
いっしょにご飯を食べること
いっしょに写真を撮ること
いっしょに映画を観ること
いっしょに桜を観ること
いっしょに笑いあうこと
いっしょが消えて
ひとりのいま
出来ることは
ただひとつ
あなたは
わたしといっしょで
幸せでしたか
いまだに答えは
聞こえない
自転車で走るわたしの前を
男の人が自転車で走っている
話し声が聞き取りづらく
聞こえないよと
大きい声で叫ぶ
聞こえないはず
その男の人は
あなたではない
お部屋いっぱいに飾ってある
あなたとのツーショット写真を見て
友人が言っていた
「幸せそうだね」
「どうして?」
「どの写真も笑っているもの」
不思議な言葉だった
いつもいっしょにいるのが幸せだった
ふたりはいつも無邪気だった
ある日あなたが言った
「この先またここでふたりで撮ることは
出来ないかもしれないからな」
右から左に流れていた言葉だった
無視していたわけではなく
またあると思っていた
再びふたりで撮ることは出来ない場所が
地球上にたくさんある
遠くから見る我家に
電気がついている
帰ってきている
帰ってきたんだ
灯のついている我家
温かくなるこころ
ただいま
静まり返る我家
電気をつけたまま外に出た
あなたはいない
わたしは
多分
あなたと暮らした街から
離れたいのだと思います
あなたと暮らしたことのない
あなたと旅をしたことのない
そんなところに
行きたいのだと思います
でもわかっています
たとえ
火星に行っても
水星に行っても
そこであなたの姿を
探し続けるでしょう
なにも考えぬまま
街の風と抱擁し
目的地のないまま
あなたと歩く
すれ違う人の顔はわからないまま
その人の体温に幸せを感じていた
信号が青でも赤でもいいし
横断歩道があってもなくてもいい
道に残る透明な足跡に幸せを感じていた
あなたが右にいても左にいても
わたしは幸せだったあの頃あの街で
ドラッグストアで日用品をカゴに入れた
ひとつしかないレジ並びの通路
ポイントが10倍の日は
あの人もこの人もカゴの中は盛り沢山
そういうわたしも少なくないカゴの中
ひょっこり男の人の手が
わたしの左の棚にある品物を取った
目薬だった
男の人が手にした品物に釘付けになり
賑わう店内の声は何処へと消えた
あの人が使っていた目薬
思い出すことのなかった目薬
こんなカタチでも
あの人の存在の愛おしさは
容赦なく訪れる
家に帰ったら目薬をつけよう
あの人のいない寂しさをごまかすために
どこかに行きたいなんて
無理やり自分を盛り上げているだけ
誰かが山へ行った話を聞いても
誰かが海へ行った写真を見ても
そこに立つのはわたしひとり
どこかに行きたいのに
あなたとの会話がない旅は
わたしを酷く億劫にする
あなたとの旅は
わたしにとって現在進行形
写真の中のあなたとわたしは
今を見つめる幸せな笑顔
どこにも行きたくない
あなたがいない旅は
なにも見えない聞こえない
あなたもわたしも幼少の頃は
体が強くありませんでした
大人になってだんだん丈夫になり
元気いっぱいの日々を過ごしていました
運命の出逢いがあり
あなたとわたしは手を握りました
握った手はふたりを幼子にし
幼少の頃に置き去りにしてしまったモノを
一緒にとりにいきました
あの頃にあの時にあの場所に
あなたの前にいたわたしは無邪気でした
わたしの前にいるあなたも無邪気でした
ふたりであの頃を過ごしていたのだと
写真のあなたが教えてくれました
置き去りにした無邪気は
いっしょにいる時だけ現れます
あなたの肩に頭を乗せ
ふたりの物語を聞いているのが
なによりも好きでした
あなたの手の温もりで
わたしは心地よく
ふんわりと漂っていました
あなたの口癖は
今が楽しければそれでいい
あなたが伝えてくれたこと
今やっとわかり始めています
泣いている時が好きです
あなたとの思い出を見つめれば
声にならない声で
目にはいっぱい涙をためて
大泣きしてしまいます
見つめなくても
笑うことはないのだから
泣いて辛くても
見つめ続けるのです
泣いている時
わたしはあなたとふたりっきり
あなたは幸せですか
わたしは幸せですか
考えたことなかった
いつもあなたは隣にいて
同じ風の中で
絶え間ないおしゃべりをしていた
なにを話していたのだろう
なにを笑っていたのだろう
思い出せないほど話し笑い
思い出せないほど幸せだった
喧嘩して
わたしはひとり部屋の中
携帯が繋がらないのは
いつからだろう
何時から
何日から
何年から
喧嘩したのはいつだったのか
仲直りしてご飯をいっしょに食べて
たくさん話してたくさん笑って
それはいつのことなのか
わたしはいつからひとりなのだろう
あなたがわたしの隣にいることが
当たり前とは思はなくとも
疑うことも信じることもなく
手を伸ばさなくても
あなたに触れることができる日々が
当たり前と思ったことはなく
幸せとか愛とか考えたこともなく
わざと泣きじゃくる音楽を聴き
わざと楽しかった日々を見つめ
わざと今を拒絶し続ける日々は
もうやめよう
もうやめなくっちゃ
わたしはやっぱり
あなたを探したい
わたしはぜったい
あなたを見つける
風に揺れる洗濯物が
あなたの不在を確かにする
ひとり乗る電車は
窓の外の風景を早送りにし
なにを見ているのかわからない
わたしが求めていたことは
そんな幸せだった
あなたといっしょに
たくさん美しい風景の中で
肩を並べ手を繋ぎ歩きました
あなたといっしょに
たくさん美味しい食事を
語り笑い食べました
わたしたち同じ魂
そういうことだったのだと
初めて気がついたのは
あなたを失った後でした
机の上に水滴がひとつ
またひとつ
またひとつ
右手と左手を合わせてみる
あなたと繋いだ手は
どちらが多いでしょう
きっと温かいほうですね
どちらも冷たくて
あなたの手の温かさを
忘れてしまったようです
暖かい晩秋の午後
あなたは昼寝から目覚め
よく寝たと言って
わたしの手を探すのでしょう
ここにいます
あなたの手の温かさを
思い出すために
わたしがあなたのことを想っていると
あなたはわたしから隠れるのかしら
最近はそんな気がしています
わたしがあなたのことを想うとき
あなたは口を閉ざしてしまうのかしら
そんなことが確信になってきています
わたしがあなたを求めると
あなたはうつむくのかしら
夢と現の狭間が消えています
これは詩でしょうか
それとも手紙でしょうか
どちらでもあり
どちらでもないのでしょう
わたしはでかけなくなりました
あなたがいないと
こんなにも出不精になるとは
自分でも驚いています
わたしはあまり笑わなくなりました
あなたがいないと
こんなにもつまらない日々だということに
自分でも呆然としています
たとえひとりではなくても
どこかに行くことは想像できず
なにかの面白さにも
ぎこちない笑みしかできなくなり
自分で自分が可笑しく
でも
涙も笑みも出ないまま
嬉しいと湧き立つ心は
楽しいと沸き出す心は
いったいどこに
いってしまったのだろう
嬉しい楽しいって
どんなことだったのか
それすらもわからなくなってしまった
あなたと共にいた笑うわたしを失い
あなたと共にいたはしゃぐわたしも失い
心の底から嬉しい楽しいを感じられなくなって
何年が過ぎたのだろう
でもね
あなた
わたしはほんの少し
あなたと共にいたわたしに
出逢っている気がしています
あなた
おかえりなさい
あなたのいない寂しさが
突然
たいしたことのないように感じた夕方
桜紅葉の並木道をかっぽしながら
あなたを追いかけ
あなたに追いつき
あなたの手を握る
漠然とはしているが
なにかがわたしの中にいる
確かにいる
確実にいる
いる
いる
あなたですね
どんなにあなたのことを想っても
毎日毎日あなたとの写真を見続けても
あなたは帰ってくることはないと
現実に触れているこの頃
いつから思えるようになったのか
いつから認めてきたのか
悲しみが強過ぎて
ひとりの寂しさに
疲れ始めているようです
わたしがあなたを探すのではなく
あなたがわたしを探しあて
ほらほら
わたしはあなたに会いたくて
どうしようもないのです
あなたはいつもそばにいる
そんなの嘘
いないじゃない
いるわけないじゃない
あなたの声が聴こえる
それも嘘
聴こえないじゃない
聴こえるわけないじゃない
そう思いたいだけ
そう思ってあなたを
感じているふりを
しているだけ
それはあなたではなくわたし
それはあなたの声ではなくわたしの声
だからあなたなのね
だからあなたの声なのね
やっぱり嘘
そう思いたいだけ
キミと
分かち合いたいことが
たくさんある
いつかのあなたの言葉を
そのままあなたに叫びます
アナタと
分かち合いたいことが
わたしがいるこの世界には
まだまだたくさんあります
ひとりで歩く道は
ゆっくりと静かです
可笑しなものですね
ゆっくりで静かなのに
なにも見えずなにも聞こえない
アナタの存在の大きさは
どんな風景もどんな音楽も
隠してしまうようです
泣きながら笑うのが
上手になりました
目からは涙が流れ落ち
口元はうっすらとほほ笑み
あなたの瞳を見つめています
あの日あの時スペインで
こんなにも穏やかな表情をしていたのだと
初めて気づきました
あなたの愛に
思う存分に抱かれていたわたしは
そのことに気づくことなく
あなたと共にほほ笑んでいました
涙はあなたの愛なのですか
表口から出るときも
裏口から出るときも
わたしにとって
あなたと共にいた時間だけが
確かな真実です
やっと気がつきました
その真実だけでいいのです
その真実だけを心にまとい
あなたがそうであったように
わたしは多くの人に
希望を届けにいきます
それはけっして幸せに満ち溢れた
笑いの世界ではないかもしれません
でも
それでいいのです
希望は静寂の中でこそ光るのです
あなたが抱いた夢と希望は
あなたがいなくなってしまったら
どこにいってしまったのでしょう
わたしはあなたと同じことはできないと
最近になってそのことがわかりました
わたしはあなたではないから
あなたならこうすると考えても
それはわたしが考えたことなんだと
最近になってそのこともわかりました
そんなことがわかりはじめたら
あなたはいろいろと
教えてくれるようになりました
今ははっきりわかります
これはあなたの夢と希望であり
わたしの生きる力
わたしはやっぱり
なにかをごまかしているのでしょう
ごまかしてごまかしてごまかし続けて
生きる力を得て生きる喜びに出逢い
ごまかしていることなど忘れて
ごまかしていることそのことも
自分の人生の輝きなのだと
ごまかしていたのかも知れない
あなたがいなくなってしまったことをごまかし
あなたはいると思い込んで
元気よく挨拶をしほほ笑んでいる
あなたと歩いた
名もない小さな道
遠い国のその道は
天高く花が咲き乱れ
柔らかい光が輝いていた
あなたとわたしだけしかいない
細く長い石の道
道もわたしたちも
世界から忘れ去られ
静寂の中に
ふたりだけの笑い声が
誇らしげに響いていた
手を繋ぎ歩く道は
いつまでもどこまでも
続いているのだと
今も思い続けています
それで
いいですよね
あなた
どこにいても
なにをしても
満たされぬ心
それでも
孤独でも
楽しまなければと思う
無理してるよね
無理なんだよね
時は進むけど
過去の中でしか生きられない
わたしにとっての真実は
あなたと共にいた時間だけ
あなたと一緒に行った場所に
行きたくないと思っていても
そこにいくことになるのは
なぜ
あなたと一緒に食事をした店に
行きたくないと思っているのに
そこを思い浮かべるのは
なぜ
そんなの当たり前なのだろう
あなたと共に歩んだ関心ごとは
今も変わるはずはないのだから
避ける必要はない
行け
行け
行ってもいい
行くんだ
行けばきっと
たいしたことではないことに
気づくはず
あなたが好きだったナポリタンのある店
明日7年ぶりに行きます
怖くて行けなかった地や店に
これからは行ってみようと思います
無理矢理にでも
わざとでも
勇気を振り絞って
理由を見つけている日々は
そろそろやめにします
理由などないのです
でも
理由はただひとつあることを
わたしのたましいだけが知っています
あなたがいないということを
目の当たりに突きつけられることを
見たくないだけなのです
きっと
多分
それもそろそろやめにします
数えきれないほど食べた
あの店のアサリジンジャースパゲティ
数えきれないほど通った
東京駅八重洲北口にある新幹線の改札口
あの日お互いの思い違いで
東京駅の中を
お互いがお互いを探していた
やっと逢えた時
こういう思い違いが怖いと
安心の中で話した
今
わたしは
なにか思い違いを
しているのでしょうか
あなたに
なかなか
逢うことができません
慣れ親しんだものが
すべてなくなってしまった事に
時が慣れさせてくれると思っていた
慣れないものだ
忘れることだ
温かい過去を
忘れたふりをして
友と笑いあう
笑っている時はいいが
ひとりになった時
ごまかしの重さに
押しつぶされる
すべては滑稽だ
現実と非現実の境
存在しているかのような世界
どちらにしても興味がない
あなたがいるかいないか
大切なことはそれだけ
無機質なビル街だろうが
自然豊かなところであろうが
孤独であることには変わりない
街にある窓も
村にある窓も
すべて閉まっている
今日も雨
どこかで窓の開く音がする
あなたは目覚め
わたしの元へと走ってる
悲しさは時が解決するだろう
8年は必要と友は言う
懐かしむ過去は
いつの間にか
見知らぬ過去になり
そこにいたあなたとわたしは
いつからか
見知らぬ男と女になり
時の優しさをわからぬまま
時は残酷だと叫ぶ
友は悲しみに救われないほど溺れ
寂しさには打ち勝っていたのだろう
8年経った
涙の温度が変わり
寂しさは時が経つほど深くなる
あなたとわたし
無邪気な仕草
互いに愛おしく
互いに親しく
そんなふたりが出逢い
旅を続けた日々
暮らしとは
なんと美しい響きなのだろう
あなたが差し出すご馳走の味
わたしに染み付いている味
涙とともに
その味を忘れたいけれど
他のものを食べると
こころが疲れます
あなたと共に在る世界がある
わたしはその世界で生きている
ひとりでいたあの頃
あなたと出逢いふたりになった
ふたりはなにをするのもいっしょ
でもあなたは
いっしょの意味が違うなと言っていた
わたしはなかなか答えが出せなかった
今
あなたが言ういっしょがわかりました
いっしょはたましいの重なり
いっしょはふたりでひとり
わかっていても
もうやめようと思っていても
あなたはどこにいるのですか
あなたはいつ帰ってくるのですか
わたしたちの暮らしは
どこにいってしまったのですか
置き去りにされてしまったような雲が
静かに聞いてくれました
今日の夕飯は
あなたの好きな焼うどんです
特別なことなどなく
繰り返される毎日
なんて美しい暮らし
なんて輝く笑顔
ただただ
あなたがわたしの隣にいる
ただただそれだけで
なんて弾ける時の重なりだったのだろう
わたしはそのことをしっかり抱いて
日々過ごしていたのだろう
あなたのいないこの世界で
今日は雨
やさしい人
何処に
明日は晴
用意したお土産は
バックの中
早朝の電車に乗り
それぞれの今日の顔
世界には
様々な色がある
今日の風は
もうすぐ穏やかに
明日の風の輝きを
袋につめて
あなたとの思い出が強すぎて
行けなかった場所に
少しずつ行き始めています
意識的にではなく
そのような流れが
訪れ始めまたようです
迷うことなく
後ずさりすることなく
向かいます
大きく変化したことは
その場所であの日を探しても
泣かなくなりました
なぜでしょう
思い出はさらに濃い色になり
あの頃にしか真実はないと
わかり始めてしまったからです
あなたがいないということに
わたしは慣れることはないのでしょう
きっと
あなたがいないということと
わたしは共に過ごしていくのでしょう
きっと
それでいいのです
あなたと過ごした時の繋がりが
いまのわたしを育ててくれています
きっと
あなたは不思議に思うでしょうね
こんなわたしを
きっと
小さい箱に入り
あなたとの思い出だけで
暮らしていけるでしょうか
かぎりなく静かであり
とてつもなく温かい
その小さな箱の中
がんばってほほ笑むことに
なんだか疲れはじめています
どこに行けば安心して
ゆっくり眠れるのでしょう
今日の夢も夢の中
あなたとわたしの周りには
いつも楽しいことが
散りばめられていた
白鷺は能を舞い
鴨は陽を浴び輝く羽を見せ
紅葉は池の中で音楽を奏でる
いつもは
眩いほどの豊かさで
あなたとわたしを包んでいてくれた
気がつかなかった
そんなことあんなこと
気がつかなかった
一番大切なことを
溢れ出す言葉を
ずっとずっと
しまいこんでいた
あなたへの想いを言葉にしても
ただの独りよがりなことだと思っていた
なにに臆病になっていたのだろう
すべてはわたしが話すわたしのこと
すべてはわたしが語るあなたのこと
すべてはあなたと共にあった時の繋がり
すべてはあなたと共にあった暮らし
やっとわかった
わたしが語れば
あなたはほほ笑む
もうわたしはお腹いっぱい
色々な国に行き
色々な街に行き
色々な村に行き
色々な橋を渡り
色々な道を歩き
色々な天気を浴び
色々な静寂を浴び
色々な朝陽を見つめ
色々な夕陽を見つめ
色々な雲海を見つめ
色々なホテルを味わい
色々な食べ物を味わい
それはいつも一緒だった
あなたと美しく暮らしたあの街に
行ってみようかな
あなたと手をとり行った植物園に
行ってみようかな
あなたと笑って食べた鰻屋さんに
行ってみようかな
思い描いただけでも
涙が溢れてくるうちは
まだまだ
行けそうにもありません
なぜ行ってみようかなって思うのかしら
あなたとの再会
あなたと共に
わたしの祈り
あなたがいなくなって
気がついたことの
なんと多いことか
その多さに呆れるほどです
あなたの漆黒の瞳が大好きで
ただただ笑う目元を見つめ
安らぎに包まれていました
幸せは
大げさなものではなく
ひっそりと静かに
共にいてくれるものなのだと
共にいないあなたが教えてくれました
最近の出来事です
あなたとの旅の写真を見つめていたら
ある日あなたと出逢い
この世界で刻を共に刻んでいた
あの日あの時あの場所で
県境を越え
国境を越え
美しく豊かで楽しい暮らしが
そこにあった
わたしは感謝もせず疑いもせず
あなたの隣でほほ笑んでいた
手を繋ぎ
目を輝かせ
たわいもないことを喋り続けた
あの暮らしに戻りたい
期待しているのです
あなたが語りかけてくれことを
待っているのです
あなたが現れることを
叶う出来事と信じて
すぐそこにその時が近づいている
あなたの最初の一言はなんでしょう
わたしは抱きつきながら
おかえりなさい
あなたのいないこの世界で
わたしはいったいなにをしているのでしょう
実のことを言うと
今のわたしは関心や興味を抱くものは
なにひとつないのです
関心があるふりをしているだけ
興味があるそぶりを見せているだけ
自分でもそうだと勘違いしているだけ
わかっていても
今日も明日も明後日も
そんなわたしがいるのでしょう
仲のいい雀を追い払う
嫌なわたし
イライラしていた
あっちへいけと思った
すぐに後悔した
なんてことをしてしまったのか
ごめんね
ごめんね
雀はすぐに遊びに来てくれた
嬉しくて涙が出た
ありがとう
ありがとう
あなたと一緒に雀と遊んだあの頃
楽しかったね
目に見える風景の中にも
目に見えない風景の中にも
あなたはいつもいてくれます
あの頃のように
私の隣でほほ笑んでいます
こころもたましいも
やっと整いました
動きません
動かされません
自分で動きます
あなたはいないけど
あなたの隣でほほ笑んでいた
わたしもいない
あなたがいないということは
あなたとの暮らしもなくなり
あなたと見ていた風景も
なくなってしまった
ふたりで撮った写真と同じ場所で
もしもひとりで撮ったとしても
すでにあの時の風景は現れない
わたしは想い出の世界で
ずっと生きてきた
出よう
ここから
あなたと共に
輝く世界へと旅を続けていた
イタリア、ポルトガル、チェコなど
ヨーロッパへの旅
沖縄、奈良、和歌山など国内の旅
長野、山形、北海道などスキーの旅
現実の旅は輝く世界だった
そして
何気ない日常もまた
輝く世界への旅だった
暮らしそのものが
輝く世界への旅行記を綴っていた
もう一度初めから
あなたと共に風景を見つめ
もう一度初めから
あなたと共に言葉を紡ごう
なにかを引きずることもなく
なにかに縛られることもなく
湧き出す風を捕まえよう
キミはキミを信じろと
あなたが教え続けてくれている
その言葉を信じて
見過ごしそうな光の煌めき
今の光を与えられ
静かに今に輝く
池に浮かぶ枯れ葉の姿
暮らしの中には
見過ごしそうな風景の中に
真のカタチで輝いているものの
なんと多いことか
あなたがわたしの目の前で
午後の紅茶を飲みおせんべを食べながら
止まることなく話し続けるその姿は
どんな光よりも
わたしに向かって光を与え続けていてくれた
今は目の前にいないけれど
その光を感じ続けている
いつもはこうしてた
いつもはこう考えてた
いつもはこれを用意してた
いつもをやめよう
いつものあなたの笑顔
いつものあなたの話し声
いつものあなたの温かさ
いつもがなくなった
慣れ親しんでいた
いつもを
なるべく忘れよう
そうしているうちに
新しい私たちになれる
輝く世界に
すでにいるんだ
希望に満ち溢れた世界で
すでに動いているんだ
鏡をみてごらん
キミの瞳は
愛を写しだしている
輝く笑顔の
なんと愛情深いことだろう
光は笑う
キミも笑う
なにかを引きずることもなく
なにかに縛られることもなく
湧き出す風を捕まえよう
キミはキミを信じろと
伝え続けてくれている
その言葉を信じて
見つめ合い
手を繋ぎ
歌を口ずさみ
立ち止まり
煌めく瞳
手を叩き
愛を語らう
もういちど初めから
あなたと共に風景を見つめ
もういちど初めから
あなたと共に時を紡ごう
なにかを引きずることもなく
なにかに縛られることもなく
湧き出す無を捕まえよう
キミはキミを信じろと
あなたが教え続けてくれている
その言葉を信じて
塗り絵のような日は
張りつめた静寂がある
頬染める灯は
楽しい夢でも
見ているかのようだ
そろそろ陽がのぼる
塗り絵は
新しい夜明けを告げ
自由になっていく
無邪気な仕草
愛おしく
親しく
差し出されるご馳走の味
わたしに染みついている味
その味を忘れたいけれど
他のものを食べると
こころが隠れます
アナタと
分かち合いたいことが
わたしがいるこの世界には
まだまだたくさんあります
可笑しなものです
ひとりで歩く道は
ゆっくりと静かです
静かに扉をたたいた
静かに呼んでもみた
ひとつの言葉も
浮遊することなく
ひとつの音も
もれなかった
すっかり
自分のうちに
閉じこめていた
右耳が好むカップの音
左耳が好むスプーンの音
ほのかに香る律動の音に
目を閉じ身を任せる
アナタが
教えてくれたこと
そのまま
ワタシのカタチに
なっています
アナタが
伝えてくれたこと
そのまま
ワタシのスガタに
なっています
アナタが
ワタシを見つめる
温かい眼差し
そのまま
ワタシの眼差しに
なっています
右を向けば
アナタが笑う
左を向けば
アナタが笑う
そんな瞬間を
ヒトは
しあわせと
名づけた
アナタと
手を繋ぎ
晴れの日
ちいさな
緑の道を
あるいた
ただただ
それだけ
晴れの日
ただただ
嬉しい日
控えめに
光っていた
遠慮がちに
風に揺れていた
立ち止まり
正直に眺めた
アナタの優しさが
カタチになっていた
キミの笑顔は
世界を変える
アナタの言葉を
正直になって
信じる朝
すべては
ちょうどよく
動いていく
恋しい香りが
ゆらゆらと
漂う世界で
ワタシは
電車に乗り
4駅で降り
長い通路を歩き
また
電車に乗り
目的地で降り
階段で地上に出て
日傘をさす
晴れた梅雨の日
悲しみを
通り過ぎた
寂しさは
涙が
ほんのり
あたたかい
それだけ
悲しみが
深くなり
それだけ
寂しさが
静けさになり
それだけ
幸福もわからず
それだけ
幸福の中にいた
朝も昼も夜も
アナタと一緒に
過ぎ去った日々を
旅しています
それは
過去というのです
でも
ワタシには
未来のような
すぐそこに
アナタが
いるような
それでいいんだよ
愉快な
偶然の出来事
不思議な
時の流れ
そんなことに
出逢うたびに
アナタ手作りの
スパイスを味わう
いつも美味しい
いつも愛情深い
アナタの光は
一度たりとも
ワタシから
離れたことは
ありません
雀がさえずっている
親切な街の小さな店
アナタの好きな珈琲を
今日も飲んでいる
目の前の動画は
手を伸ばせば
素早く消え
店内の音楽が
ワタシの手の中で
正座する
カップの中には
気前よく
アナタの言葉が
浮いている
幸福の中にいる時は
幸福の温度は
わからず
暮らしの中にいる時は
暮らしの湿度は
わからず
笑いもすれば
ふくれたりもして
肩を揉めば
足を踏んだりもして
いつもいっしょの
麗しき生活は
ふたりだからこその
正しい光
キミにとっての
真実は
あの時の
かけがえのない
煌めく時の繋がりの
中にしかないことに
あの坂の上で
キミは気づいた
それは
きっと
素敵なことなんだ
真実は
ふたりの中にしか
ないんだ
その真実を
上着にして
キミはキミで
いればいい
どこにいても
キミはキミと共にいた
風景になり
誰の顔を見ていても
キミはキミの顔になり
ココロ響く
出来事に出逢うと
キミはキミのやさしさに
深く抱かれる
キミは
いつだって
大丈夫
キミは
いつだって
キミを信じればいい
キミは
いつだって
笑っていればいい
キミは
そこに
行けばいい
キミの
想いに
従えばいい
キミの
明日は
ちゃんと動く
香り放つほど
我慢していた
何年も
深海にいた
我慢の香りの先には
なんと美しく輝く
アノヒトの真心
その光は
深海にまで到達し
内側から
安らぎと誇りに
満たされた
光が蘇る
夢中になることは
アナタとの写真を見つめ
アナタの言葉に触れ
アナタとの時の中で
戯れること
夢中になっている
その中でも
やっぱりなにかを
見つけようとしている
ああ そうか
ああ これだ
幸せなど
考えたことないほど
幸せだった
幸せの中に
通り過ぎたその中に
今を
見つけようとしている
振り向く風に
丁寧に会釈する
どこにいくのでしょう
おまかせします
今頃はアノヒトは
食事中でしょう
邪魔をしては
いけません
名もない道を歩き
名もない花を愛で
名もない雲の行方を
見つめましょう
そろそろ
いい時間です
アノヒトを尋ねに
いきましょう
大丈夫
すでに約束しています
一筋の風が吹く
アノヒト
トンボが目の前を
飛んでいく
アノヒト
やけに懐く雀がいる
アノヒト
アノヒト
アノヒト
へんなカオしている雲
アノヒト 笑ったよ
アノヒトのやさしさが
ふってくる
面白かった
楽しかった
今度はいつ
いつかまた
いつはいつ
またはいつ
目覚めれば
その日がね
ほら目の前
笑ってるよ
今も笑ってるよ
鏡みて笑ってるよ
家の中を歩きながら
笑ってるよ
ご飯食べ終わって
笑ってるよ
どんな時でも
笑ってるよ
笑ってるよ
笑ってるよ
アナタとの約束
笑ってるよ
笑ってるよ
あなたが座っている
全身で振り返った
気のせい
ゆっくり歩いて
背もたれに手をかけ
少しだけ座ってみた
風の中にある
あなたの声が
わたしの指先に
とまった
セロテープで なにを貼りましょう ホチキスで なにを閉じましょう 定規で なにを測りましょう 想い出を 貼るのはやめます 言葉を 閉じるのはやめます 縮まらない距離を 測るのはやめます 丸出しの顔のまま ゴミを捨てにいきます 明日は 燃えないゴミの日 今夜は 泣いていい日です